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ユーノとフリージア その五

最近暑いですね~・・・・・

6月でこれだと夏本番になると・・・・・想像したくもないです(ll´д`)




死んでしまったものは、もう二度と動くことはない。



当然、しゃべることも、笑ったりすることもない。



―――――それが、「死」という概念だから



・・・・・しかし、




「・・・・・ここは、その人の心の奥を映し出す部屋」




いま、ユーノの目の前には



「・・・・その人が最も望む願い事を映し出す部屋」



「死」んだはずの少女が




「いや、その人の願いごとが、形となって映し出される部屋、かな」





動いて、微笑んで、ユーノに喋りかけていた。

















「・・・・ユリ、姉ちゃん・・・・?」




忘れるはずもない、幼き頃のユーノ記憶。


その一ページにいる、ユリという少女。


ユーノの目の前で死んでしまった、その少女。




「・・・・うん、そうだよ」




その少女は、全く変わらない姿で、ユーノの目の前に立っている。


普通では、ありえない光景。



なぜ?どうして?



あらゆる疑問が、ユーノの思考を停止させる。







「少年は、奇跡を信じるかい?」

「え?」


そんなユーノに、いきなりの、ユリの言葉。


「ここは、そんな奇跡が叶う部屋に通じる部屋なんだよ」


「・・・・・」



ユーノは、しゃべれない。

思考が、まだ追いついてこない。

・・・・・この現状に。




「さっきも言ったけど、ここは願い事を映し出す部屋なんだ。・・・・・たとえ、どんな願い事でも」

「・・・・・」



目の前の少女がなにを言っているのか、ユーノには分からない。


しかし、ひとつだけ分かったことがある。




「・・・・・・久しぶり、ユリ姉ちゃん」

「!」




いま、目の前に、彼女がいる。

そして、自分にはなしかけてきている。





「・・・うん、久しぶりだね、少年」



そんなユーノに、笑ってユリは言葉を返した。













「・・・・・じゃあ、この部屋の力で、ユリ姉ちゃんは存在してられてるの?」


ようやく落ち着いたユーノに、ユリが説明する。



「そうだね」


「・・・で、その存在するための媒介が僕の記憶・・・・・?」

「うん」



ユーノの記憶の中にあるユリの情報と、この部屋にある奇跡の力。

その二つにより、この部屋に存在している、とユリはいう。




「・・・・そして、この部屋で願った願い事が、叶う・・・・・たとえ、どんな願いでも」

「そう、だね」


「・・・・・・」




自分が発した言葉に、思わず呆れるユーノ。



「・・・・・なんでも願い事が叶うロザリオ・・・・・」

「!」


聞き覚えがる、ワード。


「少年も知ってるでしょ?・・・・・実際に奇跡を起こしたところは見たことはないかもだけど」

「確かに・・・・聞いた・・・・というか、見たことはあるけど・・・・」


いつの日かこの部屋で見た赤い色のロザリオを。


「それが、奇跡を起こすって?」

「うん」

「・・・・・信じられないよ・・・・・だいたい、奇跡なんて・・・・そんな曖昧というか・・・・」



そもそも、これは現実なんだろうか?

普通に考えたら、誰も信じないようなこの状況を、ユーノは信じきれない。



「・・・・信じられない?」

「・・・まぁ・・ね。だって・・・・・」

「・・・・・普通じゃありえないことなんて、そんなのあっさりと壊れるよ」

「え?」

「要は、世界は少年が思っている以上に広くて、深いんだ。・・・・少年の生きてきた世界じゃ、ありえない奇跡でもね」

「・・・でも・・・・」

「だいたい、死んでしまった私がこうやって今少年と話してるのも普通じゃありえないじゃない」

「っ」




一瞬夢じゃないかと疑う様な体験。



――――死んでしまったものと、会話している。



そんな非現実的な現実が、ユーノを信じさせようとする。






――――この部屋の、奇跡を。




「・・・・・まぁ、普通は信じられないよね。なんでも願い事が叶う、なんていきなり言われてもさ」

「・・・・・」



しかし、ユーノは信じ始めていた。



いや、信じたい、とそう思うようになっていた





どんな形であれ、思い続けていた人に、出会えた奇跡を。




「まぁ私がここに居るってことは、少年の願い事ってのは私に関することなのかな?」

「え?」

「言ったでしょ?ここは願い事を映し出す部屋だって。・・・・つまり、私がこの部屋に召喚されたってことは、少年の願い事は私に関することなんでしょ?」

「ユリ姉ちゃんに・・・関すること・・・・?」





「つまり・・・・・」






―――――私を、生き返らせて下さい、とか。




「!」

それは、ユーノにとっては当然の願い事で、


ずっと、ずっと。


ユリは死んでしまったあの日から、無理とは知っていながらも、




―――――もし、ユリ姉ちゃんが生き返ったら――――


そんな夢物語。


死んだモノが生き返るなんていう、馬鹿げた願い。


しかし、だれもがいつかは願う、そんなありきたりな願い。


・・・・・意味のないものだとは分かっていながらも、ユーノはどこかで願っていた。



「じゃあ、僕が願えば」




―――――ユリ姉ちゃんは、生き返る―――?



「・・・それは、分からない。だけど、おそらく生き返るんじゃないかな・・・・?」

「!」



あまりにも現実離れした答え。しかし、もしソレが本当ならば。ユリが、生き返るならば。


ユーノは、何のためらいもなく願いだろう。


―――――ユリを、生き返らしてくれ、と。




「・・・・だけどね、少年」


しかし、現実は厳しくて。



「願い事は、たった一つしかできないだ」

「・・・・え?」



おもわず、大切なことを忘れそうになって。




「・・・・本当に少年が救うべきは、私なのかな?」

「―――っ」



人の本当の願いなんてものは、簡単に移り変わるもので。



「・・・・・今の私は少年の記憶から作り出されたもの」



だから、人は自分の本当の願いを、すぐに忘れてしまう生き物で。




「言わば、少年の一部」




だからこそ、本当の願い事は自分じゃなくて。




「だから、わかるんだ」



他人の方が、よく知っているもので。



―――――いつでも、他のものによって、いわれてから気づくもので。




「・・・・・あの少女のことも」



ひとりの少女が、ユーノの頭の中に浮かび上がる。



「少年が救うべきは、私じゃない。・・・・それに、一度死んだものを蘇らすなんて、本来はあっちゃならない」


「で、でも――――」

「それに」


戸惑うユーノに、ユリはいう。


「言ったでしょ?私が消える、あの時」





『――――この十年間、本当に楽しかった、って―――――』



「・・・・・・」

「・・・・あの言葉は、嘘じゃない。私は、本当に幸せだった」

「でも・・・・!いくらなんでも短すぎるよ・・・・・っ!これからじゃないか!それが・・・たった十年しか生きれないなんて・・・!」

「じゃあ、あの子は?」

「っ!!」


ユーノの脳裏に、再びひとりの女の子が浮かび上がる。


「私は、十年も幸せを感じることができた。だけど、あの子は少年と出会ってまだ一年しか経ってないじゃないか」

「・・・・・」


自分が守り続けると決めた、ひとりの少女を。



「・・・ユーノ」



ユリは、ユーノに言う。



「あの子はきっと、今一人きりだ」



諭すように、ゆっくりと。



「・・・・ソレを救えるのは、ユーノ、あんたしかいないんだよ」

「・・・・・・・」


ユリの言葉に



「・・・うん・・・・・」



ユーノは、静かに頷く。



「約束・・・・・したんだ。自分自身と。この部屋から彼女を、フリージアを連れ出したときに」



―――思いだす、初めて彼女と出会ったときのこと。



「・・・・・・さみしい思いは、させないって」



―――その時の、彼女の寂しそうな顔を。


もう二度とあんな想いは彼女にはさせないと、誓ったあの日のことを。






―――昨日彼女に言った、家族になろうという言葉を。




「・・・・これじゃ、父親失格だね」


何かが吹っ切れたように、ユーノは言う。



その顔は、立派なひとりの青年だった。



「まだ、父親ってわけじゃないけどね。でも・・・・・」



そんなユーノの目を見て、ユリは微笑む。まるで、子供を見守る、母親のような目で。



「少年ならなれるさ、あのこの本当の家族に」


ユリがそういうと同時に、白い部屋に扉が生まれる。この部屋に通じていた、木でできたあの扉が。


まるで壁となるように、二人の間に。



「・・・・いっておいで。あの子が、待ってる」


扉越しに、ユリの声がユーノに届く。


「・・・・うん」


そのユリの言葉に、ユーノは頷く。穏やかな笑顔で。








「・・・・最後に、言っておきたいことがあるんだ」

「?うん?」


もはや姿の見えないユリに、ユーノはいう。



「・・・・僕の初恋は、ユリ姉ちゃんでした」



―――――これからも、ずっと。



「・・・ははっ」



もはや姿の見えないユーノの言葉。



「うれしいね、あんな愛想なかった少年にそんなこと言ってもらえると。何?ツンデレ?」

「う、うるさいよ・・・・・っていうかなんでそんな言葉知ってるのさ」

「あははっ。・・・・そりゃあ、今の私は少年の記憶から生み出されたものだからね。・・・・少年が知ってることは、私も知ってるさ」


「・・・・それは・・・・参ったな」

「あははっ。・・・・・でも」



しかし、たしかに




「残念だけど」




そのユーノの言葉は




「少年は何時まで経っても」




ユリに、届いた。





「わたしにとって」



たとえソレが、幻でも。

想いは、確かに届いた。




「・・・・少年だよ」




・・・・そういって、ユリは、消えていった。




「・・・・・はは」



もはや聞こえなくなった彼女の声。



「フラれちゃったな」




寂しくないといえば、嘘になる。


しかし、後悔は、今のユーノにはなかった。


何故なら、今のカレには救うべき人いるから。






―――――約束を果たすために。



ユーノは踏み出す。




「・・・・・よし」




フリージアが待つ、その先へ。



扉に手をかけ、彼女の元へと。
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