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ティアナ奮闘記? そのろく

「今回は前回の続きもの!」
「先生とギン姉ぇが出会って、数日たったところからスタートします!」
「それではどうぞ~」


「・・・・・講演会?」

ふいに彼の口からそのような言葉が聞こえたものだから、思わず聞き返してしまった。

「えぇ、前々から非常に興味のある議題を取り上げてまして・・・・一度行ってみたかったんですよ」
「はあ・・・・」

彼、ユーノ・スクライアという人物と知り合って、しばらくの月日が流れた。初めのうちは掴みどころのないやりにくい人だと思っていたけれど・・・・最近になって、彼は意外と気さくな人だということに気づいた。

「なので・・・・申し訳ありませんが、今週末は御一緒することができません。・・・すいません、わざわざこちらまで来てくださって・・・・」
「あ、い、いえ・・・・」

私は、ここ最近彼の元に足を運ぶことが多くなっていた。・・・・というのも、彼、ユーノスクライアという人物はこの無限書庫と呼ばれる司書の中でトップである司書長であり、なにより時空管理局本局の次元航行部隊、クロノ・ハラオウン提督を初めとして、聖王教会・教会騎士団である騎士カリムなどといった重役と知り合いであることが判明・・・・友好関係を結んでおいて、損はないとふんだのだ。

そんなわけで、今日も週末の御誘いに来たのだけれど・・・・残念ながら、彼は用事があるようだった。

「・・・・・あの・・・・」
「?」
「その講演会ですが・・・・・私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
「え?」
「いえ、前々から講演会というものに少し興味がありまして・・・・・」
「はぁ・・・」

・・・・当然、はっきりいって全く講演会など、興味はない。彼が普段、どういったものに興味を持っているのか、少し気になっただけ。




そんな私に対して、彼は二つ返事で了承してくれた。・・・・彼のうれしそうな顔を見て、少し心が痛んだのはないしょだ。
















「・・・・・・早く来すぎたかしら・・・・・」

約束の週末、私は彼との待ち合わせ場所でつぶやく。約束していた時間まではまだ十分ほどあるけど・・・・・

「・・・・さすがにそろそろ来てほしいわね」

と、まあ、まるで三十分前から待機していた自分が少し残念というか、なんだか一人気合入ってるみたいで少し恥ずかしいというか・・・・・あぁ、もう・・・・こんなことならもっと地味な服にしてこればよかったわ・・・・・。周りの目線が・・・・・気のせいか少し痛いような・・・・・

「すみません、お待たせしました」
「!」

と、一人そんなことを頭の中でぐるぐる考えていたら、ようやく彼が現れた。

「申し訳ありません、少し遅れてしまって・・・・」
「い、いえ!約束の時間まであともう少しありますし・・・・」
「女性を待たせるなんて・・・・紳士として少し配慮が足りなかったですよね?」

そういってほほ笑む彼を見て、少し小突いてやりたかったけど、さすがにそれはやめておいた。

「では、まいりましょうか?」
「はい」

そういって前を歩く彼。そんな彼の格好は、いつもの緑色のスーツ姿ではなく黒のツーピース、真っ白なカッターに少し控えめなうすい青色のネクタイ、いつもしていたあの緑色のリボンをほどき、いつのより少し高めの位置で髪を止めていた。そして何よりも印象深かったのは、書庫にいるときいつも付けていた眼鏡をしていないことだった。

そして私はというと、普段着にしては少し派手な、けれどパーティーに行くにしては少し地味な露出の少ない黒のドレスを着ていた。髪型は、トップに大きなおだんごを作り、アイロンで少しまとめた簡単なもの。

(・・・・もう少し明るい色にすればよかったかしら・・・あと髪型も・・・・・)

私だって仮にも女性。少しは、服装や髪形について触れてほしかった・・・・なんて思ってたり。





・・・・まあ、彼にそんなことを期待するのは・・・・ねえ?




















・・・・・・そんなこんなで、迎えの車に乗って約三十分、私たちはミッドチルダの東部にある大きなホテルのようなところにやってきた。

「どうもありがとう」

ユーノさんが運転手にそう言い、二人で乗るには大きすぎた真黒の車はどこかへ走り去って行った。

「・・・・・はぁ~・・・・・」

なんとなく、住んでる世界の違いを見せつけられたような・・・・

「?どうかしましたか?」
「い、いえ・・・・・」

いけない・・・・早くも少し不安になってきたわ・・・・

「気分が少し優れないようでしたら」
「だ、大丈夫です」
「・・・そうですか・・・・・・・気分が悪くなったら、すぐに教えてくださいね」
「は、はい・・・・ありがとうございます」
「いえいえ」

そう言ってほほ笑みながら、私をエスコートする彼。

「・・・・・・」

少し、頼りがいのある人に見えたのは・・・・・気のせいかしらね?








ホテルに入った私の目に飛び込んできたのは、広すぎるエントランスホールだった。明らかに偉そうな老若男女がいたるところで話し込んでおり、どの女性も綺麗なドレスを着こんでいた。

「では、受付に」
「あ、はい」

これは・・・・・どうしましょう・・・・礼儀作法とか・・・・勉強しとくべきだったわ・・・・

「ようこそいらっしゃいました」

目の前には、綺麗な受付の女性。

「エラ社長の紹介で参りました、ユーノ・スクライアです」
「エラ様からご連絡をいただき、おまちしておりました」

何やら、形式ばったやり取りをする彼と受付の女性・・・・・・・招待状が何とか言ってるけど・・・・

「・・・・・」

ここは少し・・・・黙っておこうかしら・・・・いえ・・・・でも一応・・・挨拶ぐらいしたほうが・・・・でも挨拶のやり方とかあるのかしら・・・・?

「おお!これはこれは・・・・ユーノ・スクライア司書長殿!遠いところお越し頂き、有り難う存じます」
「!」

私がそんなことを考えていると、不意に後ろから大声で私たちに向けて話しかけてくる人がいた。

「これはこれは・・・・ザザ社長・・・・御無沙汰しております」
「いやいや!どうやら仕事の方が大変忙しいようで・・・・・最近、御活躍のようですな!」
「そんな・・・・・私なんてまだまだですよ」
「はっはっは!またまた御謙遜を・・・・!私どもの耳にも届いておりますぞ!最近書かれた論文がまた大好評だったようですな!」
「恐縮です」

「・・・・・・・」

え?だれ?いきなり来てユーノさんと話してるこの・・・・・おじさん?って言い方は失礼よね・・・・多分どこかのお偉いさんかと思うけど・・・・

どうしていいか分からず、彼に助けを求めようと、彼の顔を横目で覗き込む。


「・・・・・っ」


・・・・彼の顔を見て、思わず私は声を上げそうになった。


・・・・違う。つい先ほどまで私に向けていてくれた笑顔は消え、そこには感情のない、どこか遠くを見ているような目をした、彼がいた。

笑ってはいる。そう。確かに彼は、目の前の男性に向かい、微笑みながら会話をしている。しかし、その微笑みは完全に作られたものだった。目が笑っていない、とでもいうのだろうか。ともかく、彼は冷め切った表情で目の前の男性と会話をしていた。

・・・・そうだ。

彼のあの顔を、私は見たことがある。

そう、初めて彼と会った日、彼は私に向かいあの表情を見せた。形式ばった、まるで機械のようなあの笑顔を。

「・・・ザザ社長、お時間です」
「む?もうそんな時間かね?」

ふいに、男の後ろで立っていた、男の秘書らしき女性が、ザザ社長と呼ばれる男に告げた。

「申し訳ない、挨拶回りがまだ終わっていなくてね・・・少し失礼するよ」
「とんでもない、貴重なお時間を削っていただき、ありがとうございます」

そんな、まるで教科書通りの受け答えを済ました後、男は秘書を引き連れてどこかへ行ってしまった。

「・・・・」
「・・・・」

なんともいえない沈黙が、私と彼の間に流れる。

「・・・・行きましょうか?」
「・・・・はい」

彼は、何も言わなかった。だから、私も彼に何も尋ねなかった。
彼の、少しさびしそうな横顔が、すべてを語っているようで。私は、何も言わず彼の後ろをついていった。















「・・・・今日はありがとうございました」

講演会を聞いた後、私は彼に行きつけのレストラン(これまた行ったことのない高級な)に連れて行ってもらい、食事をご馳走になった。

「いえ、私のほうこそ付き合ってもらって感謝してます」

食事を終え、帰りのタクシーの中、彼は少し疲れたような表情で言う。

「普段、講演会なんて一人で行きますから。今日は、付き添いの方がいて楽しかったです」
「付き添い、ですか」
「・・・・気に障りましたか?」
「いぃえ?」

そんな、少しチグハグした会話。それでも、少しは彼と打ち解けた証なのかもしれない。

「・・・そういえば」
「?」

ふいに、スバルのことを思い出した。

「最近、妹がお世話になっているようで・・・・」
「・・・あぁ、スバルさんのことですか?」
「はい、なにやら用もないのに押しかけているようで・・・大変申し訳ありません」
「いやいや、全然構いませんよ」
「どうやらスクライアさんのことが気に入ったみたいで・・・・ご迷惑をおかけしてます」
「気に入った・・・ですか」

少し前までは、こんな会話を彼とはすることができなかった。しかし、彼の少し緩んだ顔を見て、このまま会話を続けることにした。

「普段、スバルは何を?」
「書庫でですか?」
「はい」
「そうですね・・・・基本、飛び回っていますね」
「あら・・・・」
「その度に、親友からの罵声を浴びていますよ」
「親友、といいますと・・・・」
「ティアナ・ランスターさんです」
「あぁ・・・・」
「どうやら、彼女のほうは勉強しにやってきているようですが・・・なかなか妹さんのせいではかどらないようですよ?」
「それはそれは・・・後できつく言っておく必要がありそうですね」
「まぁ、彼女もまんざらではないようですけどね・・・・あぁ、そういえば・・・・」


尽きることのない、彼との会話。こんなにも、ひとつの話題で彼と話したことはなかったわ。

だけど、一番驚いたのは、彼とこんなにも長く会話が続いたことじゃなくて、



彼の、嬉しそうな表情を見れたことだった。


先日見た、講演会の同行をお願いしたときに見せたあの表情ではなく、まるで子どものような笑顔。

そのときになって、ようやく私は気づいたわ。



・・・・あぁ、彼はまだ二十前後の少年だった・・・・って。



きっと、彼はその地位にいることにより、さまざまな世界の黒い部分を見てきたんでしょうね。

権力、横領、詐欺、賄賂・・・・・きっと、彼が時折見せるあの感情のない顔は、きっとそんな黒い世界から身を守るために、本当の自分を隠しているんでしょう。

自分に近づき、その権力に乗っかろうとする人たちから。




・・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・



なんだ、私じゃない・・・・・・・・・・




最初、私が彼に近づこうとした理由を思い出し、彼への罪悪感で一杯になる。



「・・・ギンガさん?」
「え?」
「?どうかしましたか?」
「い、いえ・・・・どうやらスバルは書庫になじめているようで・・・ほっとしました」
「あまり、司書以外を書庫に入れたくはないのですがね」

微笑みながらそんなことをいう彼。

きっと、本当の彼は、気さくで、優しい人なんだろう。

「・・・これからも、スバルをお願いしますね?」
「・・・人の話を聞いていましたか?」
「えぇ、それはもちろん」
「・・・やれやれ・・・」


彼は、わたしのことをどう思っているのだろう。

少なくとも、今は私に対していい印象はないでしょうね。

でも、彼と話してみて。彼に近づいてみて。いつか、本当の彼と話をしてみたいと思った。

私にも、あの笑顔を向けてくれる日が来るのだろうか。私を、友人と思ってくれる日が来てくれるのだろうか。





家の前でタクシーを降りるとき、私は彼に言った。

今まで、彼をどういう目で見てきたかを。これからは、一人の知り合いとして尋ねてもよいかを。



頭を下げる私に、彼は




「また、講演会について来てもらえますか?」



そう、微笑みながら言った。














































「・・・・これが、私が彼と打ち解けるきっかけになったの」


『・・・・』


なんとも言えず、ただギンガを見つめ返すティアナとスバル。

「きっと、彼にとってあなた達は本当の自分で接することのできる数少ない友人よ」

「・・・な、なんか」
「照れるね!ティア!」
「て、照れないわよ!」
「せんせーが私達のことそんな風に思っててくれたなんて・・・・信頼されてるんだよ!」
「し、信頼・・・・ねぇ~・・・・」
「よ~し!先生のとこ行こっか!?」
「へ!?な、なんでよ!?」
「んー・・・なんとなく!」
「なによそれ・・・・」
「いーからいーから!さ、行くよ、ティア!」
「行くも何もついさっき会話したばっかじゃ」
「レッツゴー!」
「こ、こらー!走るなー!他の人に迷惑でしょー!」







走り去っていく二人を見て、ギンガは呟く。


「・・・いつか、私もあの中に入りたいわね」


そう、微笑みながら。









「・・・・・・まあ、講演会にはもう行きたくないけど」



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